2019.10.25

東日本大震災により放牧を休止

 2011年3月11日午後、忘れもしません。これまで経験した事の無い激しい揺れに襲われた東日本、私たちは2階の事務所でミーティングをしていました。何とか1階に降り携帯電話で牧場スタッフの無事を確認しようとしましたが、携帯電話がつながりません。半年前に放牧場を拡張し、数名のスタッフが放牧場で作業をしていました。
 その後、2日間の停電がありました。最も頭を悩ませたのは「水」でした。梅山豚は地下100メートルからの井戸水を飲んでいます。しかし、電気が無いと井戸を汲み上げるポンプが動きません。水が出ないと、母豚は水を飲めず母乳が出なくなります。肉豚も水が飲めないと餌を食べなくなります。何よりも大切な水・・・親戚の井戸まで水をいただきに行ったりもしました。停電が解消して水が出たあの感動は今でも忘れられません。
 その後、停電が解消してテレビのニュースを見てからが本当の苦難の始まりでした。福島第一原発の事故により放射能が広範囲に飛散しました。拡張したばかりの放牧場の土からも微量の放射能が検出され、私たちは20年以上続けて来た放牧を休止する決断をしました。
 さらに、深刻だったのは風評被害です。茨城県産の梅山豚は、特に西日本のお得意様を多く失いました。信頼を回復すべく私たちは独自で全ての枝肉の放射能検査を行い、結果をFacebookで毎週公表してから販売しました。放射能汚染されていない事を証明しながらも注文のキャンセルが続く毎日は不安で一杯でした。
 そんな中でも、応援して下さる梅山豚ファンの方々が多くいました。真剣に安全性をPRする私たちに新たなファンも現れました。苦しみから産まれた絆を強く実感した2011年は、私たちの再出発の年となりました。

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