2019.12.11

人工授精の取り組み

 梅山豚は世界一の多産系豚として知られています。
 しかし現実には、多産の時もあれば少ない時もあり、その多産の能力が発揮できているのか疑問な状態が長く続いていました。
 さらに、受胎率も満足できる状況には無く、悪い時には交配しても受胎しないケースが50%を超え計画的に肉豚生産ができない時もありました。
 これは梅山豚が日本に100頭程度という原種豚であり、近親交配の影響によりどうしてもその力を出し切れないという問題が起きていました。
 こうした問題を少しでも解決する方法を考えた結果、それまでの雄豚×雌豚の本交から人間による精液注入の人工授精に切り替える決断をしました。(豚では人工授精はまだあまり普及していません)
 そこで平成25年2月人工授精を導入するべく部屋を作り、顕微鏡や、精液を一定の温度に保って保存する機械等を揃えて行きました。当初は精液を購入して注入する事から始めました。
 始めた頃は精液が逆流したりしてうまく注入できず、時間がかかることも多かったのですが、慣れるとスムーズに注入できるようになりました。
 しかし、目標としていた受胎率90%を達成するには至りませんでした。
 そこで、次のステップとして自分たちで雄から精液を採取する事に挑戦しました。
 採取した精液の活性を顕微鏡でその都度確認し注入する事で、雄豚のコンディションも把握する事ができるようになりました。
 こうして根気よく試行錯誤を続けた平成30年、遂に年間通じて受胎率が90%という目標を達成することができました。
 さらに1回に20頭を超える分娩も出始め(一般の豚は約10頭)、本来の多産系という梅山豚の能力を十分引き出すことに成功しました。
 今から思うと「必然」だった人工授精への挑戦。しかし、スタッフが揃ってこそできる根気の要る作業の連続でした。
 人工授精の成功により、梅山豚の生産は新たなステージへと進むことになり、大きな可能性も拓ける事となるのです。

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