社長の昇が緊急入院
それは突然の出来事でした。
2015年12月15日、昇は毎週火曜日の梅山豚出荷を終え、スタッフと昼食をとっていました。
その日は友人から贈られた大好物の牡蠣を蒸して食べる楽しい昼食でした。
食べ終えた直後、昇は猛烈な寒気に襲われ立っていられなくなりました。
熱は40℃を超え激しい背中の痛みで歩けないほどでした。
スタッフが近くの総合病院に運び救急外来で検査をし、即入院となりました。
病名は「連鎖球菌による感染性脊髄炎」、血液検査では命の危険もあるほど細菌感染を示す数値が上がっていました。
発病前の1週間、昇は多忙を極めていました。
関東東北豪雨で被害に遭ったトウモロコシをたった一人で刈り払いし処分しました。
その後に大阪出張、一旦茨城に戻ってから、今度は東京から北海道に出張して戻った直後でした。
疲労から知らず知らずのうちに免疫力が下がっていたのでしょう。
24時間抗生物質の点滴に繋がれ、寝返りも打てないほどの背中の激痛と闘いながらの36日間、クリスマスも年越し蕎麦もお節料理も病院でいただく事になるとは・・・そして、昇のいない牧場は不安な日々を過ごしていました。
それは、梅山豚の出荷選定を必ず昇が行っていたからです。
実は牧場で育てられた豚が全て梅山豚として出荷されるわけではありません。
肺炎を患って痩せてしまったり、脚を骨折していて左右が対称になっていなかったり、ばい菌が入って化膿してしまった部分があったり等々、梅山豚として出荷できない豚も若干あります。
梅山豚の品質を見極める事はまだ昇にしかできず、選定を誤るとお得意様からのクレームにもつながりかねません。
その不安は的中しました。
退院後、自宅療養していた昇はお取引先のシェフから直接電話を受けました。
「最近梅山豚肉がバラバラですよ。特に今週の肉は良くなかった。」
その直後3カ月ぶりに牧場に入った昇は実際の梅山豚を見て目を疑います。
梅山豚としてはふさわしくないものが数多く残っていたのです。
そこから出荷選定をやり直し、元の状態に戻す作業が続きました。
品質の良い梅山豚を届け続けることの難しさを昇もスタッフも感じた3ヵ月でした。