26年ぶりに豚熱が発生
それは突然のニュースから始まりました。2018年9月岐阜県で実に26年ぶりに豚熱(旧豚コレラ)が発生したのです。いったいなぜ?日本では終息したはずの病気では?養豚業界に激震が走りました。
時を同じく、社長の昇は香港への豚肉輸出を検討するプロジェクトに参加していました。その時一緒に参加していた岐阜県の養豚家が豚熱の被害に遭い、飼育していた豚がすべて殺処分されました。もしかしたらいつか梅山豚も・・・と緊張感は高まりました。
26年前の豚熱ウイルスは致死率が高く、感染範囲も限定的でした。今回はウイルスが微妙に変異していて毒性が弱まり、野生のイノシシにも感染が広まり、感染しても致死率が低いため被害は拡大して行ったのです。
そもそも豚はウイルスや細菌に弱い生き物です。一般的には予防的に投薬をして感染症に備えていますが、梅山豚では投薬を極力控えるために、業界で初めて電解水装置を導入した防疫対策を行っていました。さらに農水省の指導に従って農場の周囲を高さ3メートルの塀で囲みました。新規取引先の農場視察はすべてお断りするようになりました。また、豚熱が発生した地域や野生のイノシシがいそうな所へは、スタッフは極力出かけないようにしました。梅山豚を豚熱感染から守るためには全てやるという覚悟です。
そんな中、梅山豚の屠畜を委託していた食肉処理場を運営する会社の農場が豚熱に感染し、国内最多の56,298頭が殺処分されました。長年その食肉処理場で屠畜をしてきた梅山豚は、豚熱感染の農場から運ばれて来た豚と一緒に屠畜が行われ、梅山豚を運んだトラックも並んで洗車をしていました。豚熱に感染してもおかしくない状況でしたが、奇跡的に感染は免れました。改めて感染対策を厳重にしていて良かったと安心したのもつかの間、その食肉処理場は休業となり、私たちは新たに食肉処理場を探さなければならなくなりました。
梅山豚は三元豚とは体型の違う特殊な豚です。屠畜できるところがあるか不安でしたが、運よく車で30分の茨城県下妻市の食肉処理場が引き受けてくれることになり、お客様には間を空けずこれまでと同じように梅山豚をお届けすることができ安堵しました。
私たち養豚家の生活はあの日から全く変わってしまいました。大切な家畜を守るため、防疫対策に神経を擦り減らす日々が始まったのです。食卓に上がる食事が、当たり前のものじゃないことを知っていただき、その命に感謝して食べて欲しいと切に願う昇でした。
(現在豚熱は、岐阜県に留まらず2019年9月には関東、2020年1月には沖縄県、2021年12月には東北、2023年8月には九州で感染した農場が確認され殺処分が行われました。そのため北海道以外の日本全国で予防的に豚熱ワクチンを接種しています。)