直営店開店
それは東日本大震災の余韻も冷めやらぬ2011年9月のこと、私たちはつくば市でお店を開きました。
震災により茨城県産の梅山豚は風評被害にさらされ、キャンセルが続き全く売れなくなっていました。育ってしまった梅山豚は売り先を失い、市場に運ぶしかありませんでした。しかし、市場では三元豚の規格に合わない梅山豚は上物には格付されず、等外という規格で取引され大幅な赤字となっていました。
社長の昇は、生産規模を縮小するのかという決断を迫られていました。加えていま育っている梅山豚の売り先をどうするのか頭を悩ませていました。そこに飛び込んできたのが直営店の話でした。つくば市にあるショッピングモールのイーアスつくばに8週間限定で出店しないかというものでした。こうなったら、お店を開いて自分で梅山豚を売るしかない、そう考えて出店を決断しました。
お店では肉も売りますが、イートインで週替わりランチを提供し、肉饅頭をテイクアウトもできる複合型の店舗を企画しました。出店したところ店は大盛況となり、契約した8週間以降も継続しないかと打診がありました。
ただ、ショッピングモールでの出店は大きな重圧がありました。それは養豚と同様365日休めないことです。台風であろうと、スタッフがインフルエンザに罹ろうと店は休めません。さらに、つくば市は農場から車で約1時間かかります。何かトラブルがあってもすぐには駆け付けられません。
継続か閉店か考えた末、契約通り8週間で閉店することを決断しました。そしてまたいつの日か再び直営店に再挑戦することを心に誓ったのでした。
そこから7年が経過し、震災の影響も少なくなりいよいよその時がやって来ました。今回は地元境町に出店すると決めて農場から徒歩で行ける場所に物件を探しました。店の名前やコンセプトを何度も話し合いました。そして店の名前は「つかはら肉店」、メンチカツのテイクアウトをメインにしました。メンチカツの開発には、お取引先でもある東京赤坂の飲食店「まるしげ」さんにレシピを書いていただき、その味を忠実に再現しました。粗挽きの梅山豚ウデ肉をふんだんに使い、ジューシーに仕上げたメンチカツで地元の名物になって欲しいと考えました。
そしてついに2019年1月、直営店「つかはら肉店」はオープンしました。つくば市の大型ショッピングモールではありませんので、開店直後から多くの来店客があるわけでも無く静かなスタートとなりました。こつこつとファンを増やしながらいつの日か繁盛店に、そんなみんなの夢が詰まったお店です。しかしこの時は、翌年から始まるパンデミックなど知る由もありませんでした。