温泉大国日本の未来
日本は温泉大国と言われています。
宿泊施設を伴う温泉地は2971か所、源泉総数は約28000を数え、もちろん世界一です。
宿泊施設総数は13050軒、延べ宿泊利用人員は1億2653万人で、調査した2020年は国民の全員が年に1回温泉に宿泊していることになります。
しかし、この日本人が大好きな温泉に異変が起きています。
それは温泉の温度が下がり湯量がいたるところで減っているのです。
そもそも温泉とは何でしょう?
古来から日本人が文化として育んできた温泉とは、地中から自噴していて、湯に溶け込んだ様々な成分により、入浴する人に様々な健康効果をもたらす「大地の恵み」でした。
科学的には証明されていなかった古来より人々は経験によって病気の治療や疲労回復などに利用してきたのが湯治です。
しかし、今の日本の温泉は1980年代から90年代のバブル景気に行われた「ふるさと創生事業」と「大型温泉施設」により姿を変えて行きました。
「ふるさと創生事業」は1988年頃から地域振興の名のもとに地方に1億円が交付された政策で、温泉井戸を掘ろうとする自治体が多く現れました。
1000メートルに1億円という費用で無理な掘削をし、湯量の少ない温泉をつくりました。
また「大型温泉施設」もバブル景気に乗じて全国の温泉地で大型の温泉施設が建てられました。
大量の温泉を使うので温泉の量がそもそも足りないところも多く、加水・加温・循環ろ過が当たり前になりました。
こうして大深度からポンプで大量にくみ上げる無理のある温泉が全国で増えたのです。
温泉とは限られた資源で石油と似ています。
何百年、何千年もかけてつくられたものですが、溜まり温まるより多くくみ上げたら温度が下がりいずれ無くなるのです。
日本最大の湯量を誇る別府温泉では温泉の湯量低下などを分析し、泉温が100年後どうなるのかというシミュレーションを行っています。
大分県はこの調査を受け、新たな掘削を認めない特別保護地区を別府市に2か所追加しました。
もう「湯水のごとく」という言葉は当てはまりません。
限りある資源を有効に活用し、地熱発電やその冷却水でエビの養殖や農業を行うなど、温泉を地域資源として持続可能な形でいかに活用していくのかが問われています。
アフターコロナによるインバウンドの増加が現実となる2023年、多くの外国人が日本の文化である温泉を求めて来日するでしょう。
温泉を末永く守る取り組みが新たな日本の温泉文化に加わり、さらに温泉の魅力が増すことを期待したいです。