2022.05.03

ウクライナは穀倉地帯

 ロシアによる軍事侵攻が現実となり、世界から注目を集めるウクライナは穀倉地帯でもあります。
 世界8位の生産を誇る小麦では、先物価格が2022年2月だけで23%も上昇し2010年以来過去最高値付近の価格となっています。
 小麦はロシアも世界3位の生産国でもあり、経済制裁などその行方に注目が集まっています。
 ウクライナはなぜ穀倉地帯なのかというと、それは肥沃な土のお陰です。
 「土の皇帝」と呼ばれてきたチェルノーゼム(黒い土)で国土の6割が覆われています。
 チェルノーゼムは土の養分が豊富でしかもバランスが良く、世界で最も肥沃な土と言われ作物の栽培に非常に適しています。第2次世界大戦中、侵攻してきたナチスが土を貨車で運び出そうとしたという逸話まで残っています。
 チェルノーゼムができた大きな理由は気候です。
 ウクライナの平均降水量は日本の5割以下、雨が少ないので森よりも草原が多い地形です。
 草の葉や根は冬には枯れて土に返りますが、冬には雪が大地を覆うので分解がゆっくり進み、おかげで土の中に養分が残りやすいのです。
 さらにチェルノーゼムの下には黄色い土があります。
 それは約1万年前まで続いた氷河時代に、氷河に削られて岩が風に飛ばされて降り積もったとされ、カルシウムなどのミネラルを豊富に含んだ土台が豊かな黒い土を支えているのです。
 そんなウクライナは、トウモロコシの生産も多く世界第6位3400万トンの生産量を誇ります。
 生産されたトウモロコシの実に67% 2300万トンが輸出されます。
 中国は生産量も世界第2位ですが、それだけでは足りず輸入もしています。
 その輸入トウモロコシの3割がウクライナからだとされています。
 世界の豚肉生産国に輸出され、各国の人々の胃袋を支えているのもウクライナのチェルノーゼムなのです。
 そんな貴重な黒い土を有するウクライナが戦場となっています。
 戦火が長引けば小麦やトウモロコシの生産にも大きな影響を与えそうです。
 ロシアへの経済制裁も原油やLNG(液化天然ガス)のみならず穀物や肥料にまで影響し、穀物価格は さらに上昇するでしょう。
 日本でもいよいよ食料安全保障の議論が始まりました。
 今回の戦争が自国で食料や飼料穀物を生産する事の大切さを再認識することとなりそうです。
 市民の犠牲者が増える事に心を痛めると同時に、欧州のパンや農産物、中国の豚肉など世界の食料の安定のためにも、被害がこれ以上拡大しないことを祈るのみです。

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