妊娠ストール廃止の動き
先日、あるスーパーのバイヤーさんからメールをいただきました。
「梅山豚は妊娠ストールを使用していますか?という問い合わせがお客様からありました」というものです。
妊娠ストールとは?一般には交配した母豚を入れる檻で、1頭1頭が別々にちょうど入るサイズのもので、一般に母豚は妊娠期間の114日間この檻に入って過ごすのです。
方向転換すらできないこの檻で立つか寝るかしかできない母豚、こうした飼育方法は既に欧米などでは動物虐待として禁止されています。
しかし、日本ではまだ規則が無く、妊娠ストールで飼育されている母豚の割合は91%にも上るという調査まであります。
近年そのような飼育方法に異を唱える消費者が出始め、署名運動まで起こっているのです。
日本ハムが直営農場で妊娠ストールを廃止すると発表したのもそのような動きに対応してのことでしょう。
実際、母豚は妊娠ストールで妊娠期間の全114日間振り返ることもできず過ごすわけですが、その後は分娩舎に移動して分娩します。
実は分娩舎も柵で囲われていて振り返ることもできず、立つか寝るかで約30日間子豚と過ごします。
分娩舎では子豚を母豚に踏まれないよう守る意味もあり、ほぼ全ての養豚家が分娩柵を採用しています。
無事子育てを終えた母豚は種豚舎に戻ります。
そこは仲間の母豚と数頭で飼育される少し広い歩き回れる部屋、ここでおよそ平均5日間だけ自由な時間を過ごした後、再び交配され妊娠ストールに移されます。
これでおわかりの通り、母豚は年に2回以上妊娠・出産をしますが、その中で自由に動き回れるのはたった10日、この過酷な環境に長くは耐えられず平均3年ほどで引退を余儀なくされます。
これが母豚の悲しい現実なのです。
私たちはヨーロッパ同様妊娠ストールには疑問を抱いて来ました。
梅山豚はこれまで妊娠ストールを使用していません。
自由に歩き回れる部屋にふかふかの敷材を敷いて、その上でのんびり寝そべる姿を毎日見かけることができます。
そして梅山豚は5年以上母豚として活躍します。
19産(9年)も活躍した母豚もいるくらいです。
効率一辺倒の日本の養豚はいずれ見直しを迫られることでしょう。
私たちは原種豚である梅山豚らしさを失わず飼育するために、妊娠ストールは今後も利用しません。
他の母豚と群れを作り、クッション性の高い敷材に寝そべりながら、お茶粕や籾殻などの敷材をむしゃむしゃ食べる。
カーテンを開放すると自然の光と風が入り、季節を実感する。
そんな動物らしい生活をさせています。
それがありのままの梅山豚の能力を引き出す最善の道だと長年の経験から導き出したのです。