2023.11.29

ふるさと納税に異変

 返礼品競争が過熱するあまり何度もルール変更されてきたふるさと納税制度。かつては返礼品の調達費が寄付額の3割を超えたとして制度から除外されたケースがありました。一方、2019年の制度改正で導入された、調達費や送料、手数料などかかった経費の5割以下ルールを違反したとして除外されたケースはこれまでありませんでした。このかかった経費の算定対象が2023年10月から拡大するのを受け、各自治体で返礼品を受け取るのに必要な寄付額を引き上げる動きが増えています。実質値上げの前の9月には駆け込みの寄付も相次ぎました。
 例えば境町のふるさと納税返礼品の「梅山豚」の場合商品代金が寄付額の3割となっています。それとは別に、送料や仲介サイトに支払う手数料などが経費にあたり、合計で5割を超えないようになっていました。さらに総務省は、確定申告が不要になるワンストップ特例制度の事務や、寄付金受領証の発行なども10月から経費に含めると発表しました。
 実は2022年度に経費率が5割を超えた自治体は109もありました。49から50%という上限ぎりぎりの自治体も329に上ります。経費の算定対象が拡大したり、送料が値上げされたりしても5割を超えないよう寄付額を引き上げる動きが増えたのでしょう。
 これによって10月からは実質値上げとなるのを前に、駆け込みの寄付も増えたのです。最大手の「ふるさとチョイス」では7月から9月までの寄付総額が前年同月比7割増となっているようです。
 しかし、なかには寄付額の見直しが不要な自治体もあります。京都市などはその代表で、経費率が39%と極めて低いからです。理由は全体の3割を電子化された旅行クーポンが占めていて、印刷代や送料が発生しないからのようです。これは自治体に残る寄付も多く、理想の形のように感じます。
 さらに新たなルールで、「熟成肉」と「精米」について原材料は同じ都道府県で生産されたものでなければならないというものが加わりました。これにより牛肉を同県内から調達できず返礼品から削除する自治体がある一方、ここ境町では地元の米を保管する施設の建設を始めました。
 2022年度に9654億円と対前年16%以上増え拡大し続けるふるさと納税はどこへ向かうのでしょうか?地方自治体が自ら稼ぐ力を磨き競争することは素晴らしく、それによりここ境町のように復活を遂げる自治体も現れました。しかし一方で自ら持つ資産を見抜けず一層衰退していく自治体が増えているのも事実です。競争に火をつけ自治体間格差を拡大していく、それがふるさと納税の実態でもあります。

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