2024.08.07

肉を奪い合う時代

 空前の好景気に沸くアメリカ、景気を冷やすために利上げを繰り返して来ましたが、依然経済は減速せず物価が高い状態が続いています。アメリカに行って来た知人からは、食品が高かったという話が多く、マクドナルドのビックマックは〇〇円、一蘭の豚骨ラーメンは〇〇円、大戸屋のしまほっけ定食は〇〇円だったとか、日本の2倍や3倍の値段になっていて驚いてしまいます。
 この間、現地価格の上昇に円安も重なって、外食や食品メーカーなどで用いられる輸入食肉の卸値が一段と上昇しました。牛丼などに使う牛肉は1年間で6割高、ハムの原料になる豚肉も上昇が止まりません。そのアメリカでは肉牛の飼養頭数が減少していて、さらに干ばつでエサとなる牧草が減ったことで牛肉の需給がタイトになっています。また、生産者は人件費の上昇で出荷価格を引き上げており、アメリカ国内で牛肉が足りなくなり豚肉へシフトしたり、オーストラリア牛の輸入に動いているようです。
 そうなると、その影響を受けるのが日本です。牛肉の約6割、豚肉の約5割は輸入に頼っていているからです。輸入肉が高止まりする中、国内の豚肉にも波及し、東京食肉市場の豚肉は今年7月に史上最高値をつけました。その価格は日本の物価を確実に押し上げていきそうです。
 豚肉の価格が史上最高値を付けたのは昨年の猛暑にも原因があります。夏は暑くて餌を食べないと言われますが、それ以上に深刻なのが不妊です。そう暑くて妊娠しにくいのです。その結果産まれてくる子豚の数が減少し出荷数が少なくなったため価格が上がっているのです。実際に梅山豚の受胎率も昨夏は過去最悪を記録しました。
 輸入肉が値上がりし、国産の肉も値上がりする八方塞がりな状況の中、私たちはどこからタンパク質を摂ればいいのでしょう?必要なタンパク質が摂れないいわゆる「タンパク質クライシス」が2030年頃始まると言われています。日本は海に囲まれている島国ですから養殖の魚類をもっと増やして魚を食べるようにしたり、国産大豆の生産を増やして大豆由来の製品をもっと生み出すなど、その他様々なタンパク質調達のアイディアを今後私たちはあみ出して行かなければなりません。タンパク質が豊富な昆虫の利用も既に研究が始まっています。人間の食用ばかりでなく、畜産や養殖魚の飼料用としてもその可能性に期待が高まっています。
 世界的な人口増加、先進国のインフレと好景気、新興国の経済発展、長引く円安、気候変動による飼料収量の頭打ち、そして暑熱ストレスによる夏季不妊、どれをとっても肉が潤沢に供給される時代ではありません。既に肉を奪い合うという時代に突入しているのかもしれません。

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