令和の米騒動
2024年は令和の米騒動と言われるくらい米不足が顕著な年になりました。店頭から米が消えたという報道が繰り返し流れ、ようやく出回った新米の店頭価格が昨年比2倍近くになった店もありました。あまりの値上がりに、逆に2023年産のいわゆる古米を買い求める人も出て米騒動はおさまりそうにありません。
そんな米不足がやってくるのを実は私たちは予想していました。それは地元で米を作る農家が減っていて、大規模な専業農家へ米作りが委託されるようになっていたのですがそれも限界に来ていました。役所に集まって耕作放棄地とならないよう引退する米農家の農地を誰が担うのか会議が繰り返し開催されていました。農家の高齢化は深刻で、さらに1台2000万円もするコンバインなど農機具の値上がりも大きく、この辺りで区切りをつけてやめようと考える米農家が全国で増えているのです。
そもそも米は余っていました。政府は減反政策として、大豆や麦や蕎麦への転作を奨励し、飼料用米を牛や豚や鶏で活用し、米の過剰生産を抑制して米価を維持する対策を打って来ました。私たちが取り組んでいる飼料用トウモロコシも減反政策の一環で田んぼにて栽培しています。あの手この手で米の需給を維持してきましたが、それも終わりに近づいています。
これからしばらくは米が足りないという時代が続きそうです。それは高齢の米農家が続々と引退するからです。人口も減っていく日本ですが、それを大幅に上回るスピードで米農家が減ってしまうのです。さらに米の価格は高止まりする可能性があります。大規模化した専業農家は人を雇用して米作りをしています。人件費、農機具費、燃料費、肥料農薬費すべてが値上がりし、経営を直撃していて米の価格を上げざるを得ないからです。もし米の価格が再び下がれば、そうした専業農家の経営まで立ち行かなくなりさらに米不足は深刻になります。日本は未来の食料を安定的にどう賄っていくのか?主食である米不足が農政の転換点にもなりそうです。
実は畜産業界にとっても米不足は大きな影響があります。それは牛・豚・鶏すべての畜種で飼料用米を利用しているからです。お米を食べた豚肉や卵などブランドの認知も進んでいて、飼料用米が入手できないとブランドの継続も難しくなります。米不足になれば、農家は飼料用米をあえて作る必要がありません。私たちの仲間が田んぼで作っている飼料用トウモロコシも同じです。そうなると再び輸入穀物飼料に依存するこれまでの畜産に逆戻りすることになります。世界各地で戦争や紛争が絶えず穀物輸入が不安定化し、円安や石油価格にも大きく左右される畜産経営は今後いっそう不透明さを増すことでしょう。
梅山豚も飼料用米を利用して15年になります。米は梅山豚の美味しさの一つでもあります。作っていただいている農家さんに直接お会いして飼料用米の必要性を伝えたり、米農家さんの現状をお聞きしたりしながらお互い継続し続けています。結局のところ人と人がいかに信頼し合えるのかが大切だと感じています。