湯たんぽ大好き
梅山豚の飼育を引き継いで今年で30年目になります。
何となく梅山豚を理解できたところと、まだまだ理解できていないところがあり、つくづく飼育が難しい豚だと感じています。
その中でも30年間試行錯誤を続けているのがその高い事故率(死亡率)です。
ご存知梅山豚は世界一の多産系豚の一種です。
中国には1回で33頭という出産記録もあるくらいで、塚原牧場でも最高で23頭産まれたことがあります。
一般豚が平均10頭のところ2倍近い頭数が産まれてきますので、ほとんどが未熟児で体重は一般豚の半分の700グラムくらいです。
母豚の乳首は片側に9個、左右合わせて18個ありますが、横になった母豚の上側は子豚には高くて乳首まで届かないとか、下側は母豚の腹に潜り込まないとくわえられずある程度パワーが必要になります。
さらに口が小さくて大きく開けられず乳首をくわえられない子豚もいて授乳にも介助が必要なほどです。30年前は産まれてきてもおよそ半分の子豚が死亡していました。
現在事故率は改善しておよそ20%、それでも一般豚の10%に比べると2倍の数が死亡しています。
そんな産まれたばかりの弱々しい未熟児同士が争って母乳を飲むわけですから、母乳にありつけない子豚もいます。
母乳は栄養ですから飲むと身体から熱を発しポカポカしますが、飲めない子豚は身体がどんどん冷えて行きます。
産まれたばかりの子豚は、体力を消耗した後低体温により死亡するケースが多く見られるのです。
ある日子豚たちが寝る保温箱と呼ばれている部屋に小さな湯たんぽを導入してみました。
300円ほどのプラスチック製の簡易的なものです。
するとどうでしょう、子豚たちは争うように湯たんぽに寄り添って行きます。
次々に湯たんぽに群がってついには湯たんぽが見えなくなるほどです。暖房器具があり部屋の中は暖かいのですが、湯たんぽの暖かさは格別なようです。
今では産まれて5日目までの子豚たちには湯たんぽを朝晩置いてあげるようにしています。
身体を温めると元気になり、母乳を飲む力も湧くようで事故率が改善しています。
30年も梅山豚を飼育していますが、低体温対策に湯たんぽがこれほど効果的とは思いつきませんでした。
そして冬の分娩直後に起きる事故ではその多くは低体温だったと改めて気付くことになりました。
今年も湯たんぽが活躍する季節になりました。
電気料金も高くなりエアコンを控える気持ちにもなります。
私たちも湯たんぽで身体を温めて元気に冬を乗り切りたいものです。